1型糖尿病について
1型糖尿病は、おもに自己免疫を基礎にした膵β細胞の破壊やHLAなどの遺伝因子に何らかの誘因や環境因子が関わって起こります。甲状腺疾患などの他の自己免疫疾患との合併が少なくないとも言われています。膵臓からインスリンほとんど出なくなる、または、全く出なくなり、生命維持に不可欠のインスリンが欠乏します。そのため、体の外からインスリンを補うことが必須になります。生活習慣が大きく関係する2型糖尿病とは発症機序が異なり、痩せている・太っているなどの体型に関係なく小児~壮年期の男女を中心に発症します。
【 1型糖尿病と2型糖尿病の比較 】
1型糖尿病の分類 〜急性発症型・緩徐進行型・劇症型〜
1型糖尿病には、最も頻度の高い「急性発症1型糖尿病」のほかに、3ヶ月~数年かけて徐々にインスリンが作られなくなる「緩徐進行型1型糖尿病」、高血糖症状が出てから1週間前後で急激に重篤化する「劇症1型糖尿病」があります。緩徐進行型は、発症時はある程度のインスリン分泌能が残っているため、2型糖尿病と同じように食事・運動療法を中心に必要に応じて薬物療法を行い、残っている内因性インスリン分泌を温存する治療を行います。劇症型は、著しい高血糖にも関わらずHbA1c(「ヘモグロビンエーワンシー」・過去1-2ヶ月の血糖値の平均を反映します)は比較的低い値を示す特徴があります。
診断基準について
初診時には血液・尿検査などのほかに、自覚症状の有無をお伺いします。「のどの渇き」「多尿・頻尿」「体重減少」「全身のだるさ」などをうったえる方が多く、「ただの風邪だと思って受診したら1型糖尿病と診断された」という方もいらっしゃいます。
糖尿病の診断検査では、血糖値やインスリン分泌能や自己抗体、尿中ケトン体などを確認します。
健康な人の血糖値は食前または食後70~140mg/dLですが、1型糖尿病では300mg/dL~ 600mg/dL前後と高値を示すのが特徴です。
【 急性発症型・緩徐進行型・劇症型の特徴と診断基準 】
治療方針と治療目標
食事療法と運動療法とあわせて、治療の中心としてインスリン製剤の注射薬物療法を行います(場合によっては経口血糖降下薬を併用します)。
現在、インスリン注射薬は様々な種類があり、個々の病態や生活スタイルにあわせて処方を行っています。
「注射は痛そう」「自分で打てるか不安」など思われるかもしれませんが、専門のスタッフが注射の打ち方のコツや保管の仕方など、分かりやすくお伝えしています。血糖測定器についても個々のライフスタイルにあった測定器などを提案させていただきます。
また食事の摂取量や運動量と不相応に過量なインスリン注射を行うと重症低血糖を起こす場合がありますので1型糖尿病も、2型糖尿病と同様に食事療法と運動療法が欠かせません。食事はインスリンの量や種類を考慮して量やタイミング、配分を決めていきます。当院では管理栄養士による栄養指導も行っており、食事についてアドバイスをしています。
治療では1日の血糖変動を抑え(高血糖や低血糖の推移を減らす)、健康な人と変わらない血糖変動パターンに近づけ、合併症の予防や進行を防ぐことが重要となります。仕事で食事時間が不規則であったり、夜勤や出張などで仕事との両立が難しいと感じる方も多くいらっしゃいます。みなさまに安心して受診していただけるように、治療を継続していく上での悩みや不安、疑問、日常のケアなど、療養上の困難に対して医療スタッフがサポートいたします。